ジュワっとする話
どうも。向井理です。
私のジュワっとする話、読んでください。
【ジュワっとする話】
幼い頃、よく父にビックボーイに連れて行ってもらった。
私はどこでも良かったが、父は頑なにビックボーイに拘った。
「なんでビックボーイなん?」と問うと、「お前がビッグになるため」とテキトーな冗談を言っていた。
先日、数年ぶりにビックボーイへ訪れた。
父とではないが、久しぶりのビックボーイに心が昂ぶる。
まるで私は『ビックボーイ』の様だ。
私はチーズインハンバーグとチキンステーキが乗ったプレートを頼んだ。
数十分後、店員さんが私の『食欲の根源』を運んで来てくれた。
「大変お熱くなっておりますので、お気をつけ下さい。」
そう決まり文句を言った後、颯爽と帰った。店内は忙しそうだ。
久しぶりのビックボーイ。脳内で美化された思い出が沸々と甦る。
まずはプレートに乗っているトマトソースをかけよう。
…
「ジュワジュワ‼︎バチバチャ‼︎」
刹那。
トマトソースは蒸発し、ただのトマトと化した。
店内には異常な程のトマトの爆音が鳴り響く。それは最高級ステーキを焼いている時の様な音。
何故だ…メニューにはトマトソースが綺麗に掛かっているのに。
なんだか可笑しくなってきた。そりゃ熱々の鉄板に熱々のトマトソースをかけたらこうなるわな。と思いつつも腑に落ちない。
ビックボーイは名ばかりではなく、大人を少年の心にする場所だと思った。
だから父は私を連れて、ビックボーイに通っていたのだと。父もビックボーイになりたかったんだ。
ビックボーイには無限の可能性がある。
そう思いながら、私は『思い出の根源』を頬張った。